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みずほ銀に34歳支店長誕生、年功序列破壊は意外な副作用も

今年4月1日、3メガバンクの一角を占めるみずほ銀行に、同行史上最年少となる34歳の支店長が誕生した。赴任先は玉川学園前支店(東京都町田市、写真)。2011年設立の個人取引に特化した支店だ。

実は昨年にも、法人と個人両方の取引業務を受け持つ北海道の釧路支店に、03年入行の35歳の最年少支店長が誕生したばかり。他のメガバンクは異口同音に、「法人営業を行う支店の支店長を担えるのは、早くても40代半ばから」と、驚きを見せた。

しかも、玉川学園前支店長は08年に中途入社した人物。転職組の存在感が薄い銀行業界において、異例ともいえる抜てき人事だ。
(ダイヤモンド・オンライン 5/8(月) 6:00配信)

 

5/8(月)にyahooニュースで掲載されていた記事です。ご覧になられた方も多いのではないでしょうか。

 

この記事を読むと率直に、「へぇ、スゴいなぁ、都市銀行で30代の支店長!しかも中途採用!よほど実力があるんだろうなぁ。実力主義が銀行でも随分浸透してきたんだなぁ…」なんて思ってしまいます。ぼくも最初はそう思いました。

 

でも、話しは簡単ではないようです。最近の銀行の実態を調べてみたらいろんなことが分かってきました。

 

実はこの記事、少し掘り下げて考えてみると、巨大な組織におけるこれからのリストラ手法と、銀行業務の変化(劣化)について書かれていることがわかります。具体的には以下の2点です。

 

1.年配社員を追い出すための新しいリストラの手口を紹介している
2.かつてのサラ金業務を今や銀行が行っているという事実

 

裏を読むようで素直じゃないと言われるかもしれませんし、オマエの勘違いだ!と反論されそうですが、全く間違いとも言えないので、ぼくの意見として読んでいただける方がいれば幸いです。

銀行というものがもはや本来の社会的な役目を果たせなくなり、社会的に存在意義の低い組織に成り下がったことがよくわかります。

 

1.年配社員を追い出すための新しいリストラの手口を紹介している

 

ぼくはサラリーマン時代、法人相手の営業の仕事をしていました。

 

ある医薬品販売会社の話です。その会社には支店が4つあり、その全ての支店の現場責任者である支店長と会って話す機会がありました。

 

4つの支店全てを回って驚いたことは、支店長が全員30代と思われる若手(中堅)社員だったことです。30代の支店長という例ではまさに今回のみずほ銀行の支店長と同じです。

その支店長が薬剤師などの特別な資格を持っているわけではありません。無論社長や役員の身内というわけでもありません。

ある程度歴史がある会社なので、当然支店には若手から年配者までいます。50代の社員も少なからずいます。

 

さぞ実力があるやり手の社員で、功績が認められて責任者に抜擢されているんだろうと最初は思っていたんですが、何度も支店長と会って話しているうちに、その印象も徐々に薄れてきました。実はどうも様子が違うんです。

 

ぼくは、ハッとしました。

この会社が30代の社員を責任者に抜擢するのは、年配社員のリストラが狙いなのではないか…?!

 

事実、長年勤めていたベテラン社員が退職することも珍しくないようです。退職して別会社を作るケースもあるようです。退職した元社員の方とも偶然話す機会があったのですが、会社の悪口を散々言ってました。やはりぼくが思っていたような狙いがあることをその時知ったワケです。

 

つまり、それまで部下だった若手社員を上司とすることによって、年配社員が居づらく感じる環境をわざと作り、自主的な退職に追い込んでいるようなんです。

 

表向きは、能力のある若手を重用するで徹底した実力主義、その実態は年配者を退職へと導く人事制度。それを目の当たりにしたときは、いくら傍観の身とは言え会社組織の恐ろしさを感じずにはいられませんでした。

 

自分が面倒見ていた部下が急に自分の上司になったらどんな気がします?昨日まで成績について叱っていた部下がいきなり上司に、しかも支店長に!

良い気がする人はいないと思います。そこが狙いなんです。

 

「そんなことにこだわるのは人間が小さい!」とか「会社組織だから当たり前」と言えばそれまでですが、やはり心良くないでしょう。

 

おそらくその支店長も、数年すると今度は自分の育てた若手にその地位を取られ、今度は自分が居づらくなるのではないでしょうか。

 

今回のみずほ銀行の件も、同じ狙いがあるのだと思います。

かつて銀行員というと、50歳前後で子会社や取引先に役員待遇で出向し、そこで定年を迎えるのが一般的でした。ぼくが以前勤めていた会社も銀行出身の部長が何人もいました。

 

ただ、今は経済状況の悪化と取引先の減少で、出向先として迎えてくれる余裕のある会社はほとんどありません。かと言って年配行員をいつまでも高額な給与で採用し続ける余裕はもはや銀行にはありません。

 

ここで取り上げられているみずほ銀行の真の狙いがそうであるとは限りませんが、ひょっとしたら、同じ狙いなのかなと思った次第です。

 

2.かつてのサラ金業務を今や銀行が行っているという事実

 

そしてもう1点、今回の記事を読んで改めて調べてみて驚いたことがあります。それは銀行の業務内容です。

 

かつて銀行といえば企業に融資をするのが主な業務で、それによって金融面で日本の経済と地域経済を支えるという重要な役割がありました。

 

しかし最近は回収不能が怖くて担保価値以上に企業にはお金を貸しません。

じゃあ銀行はどこにお金を貸して利益を得ているのかと言うと、実は個人を相手に無担保の融資を積極的に行って利益を得ているんです。

つまり、かつて消費者金融(いわゆるサラ金業者)が行っていた個人向けの貸金業務を、現在は銀行が中心となって行っているというわけなんです。

 

銀行が行う個人向けの融資というと、きっちり不動産の担保をとった住宅ローンを思い浮かべると思いますが、実際は無担保の融資がほとんどです。銀行はかつてのサラ金業者と提携していて、貸出限度額の審査から保証まで全てを委託しています。万が一回収が困難になるとサラ金業者が全額保証するので銀行は取りっぱぐれがありません。

 

さすが銀行ですね。転んでもタダでは起きません。個人に貸しても100%きっちり回収して損を出すことはありません。これが個人向け無担保融資の仕組みです。

 

今回みずほ銀行において、30代の支店長が誕生した玉川学園前支店は2011年に設立した個人取引に特化した支店ということです。個人相手に特化していれば、中小企業の社長とのやり取りも一切ありませんし経営に関する相談を受けることもありません。

 

しかも融資希望者と対面することもなく電話やFAXで融資の申し込みを受け、現金の振り込みまで完了すると言いますから、行員の業務としてはさほど複雑ではないというわけです。

 

融資希望者からの電話を受けて、その個人情報が書かれたFAXをサラ金業者に流すだけで業務の全てはほぼ完了します。取り立てもない分、さほど面倒な仕事でもなく、さほど能力も要求されません。サラ金業者がほぼ全ての融資と回収業務を代行していると言っても過言ではなく、銀行はただその名前を使って融資しているだけのことです。

 

かつてサラ金業者が行っていた「金貸し」を銀行が名前を変えて行っているに過ぎないわけです。もちろん金利などは利息制限法の適用を受けるため、かつてのサラ金ほど高くはないという良い面もありますけどね。

 

ここまで最近の銀行が落ちぶれているとは思いませんでした。

フィンテック革命、Bitコインなどの仮想通貨の普及で銀行を介さない取引がこの先も増えることが予想されます。そうなると銀行はこの先必要なくなるでしょうね。もはや銀行は斜陽産業と言え、恐らく数年後には銀行の半分は淘汰されて無くなるのではないでしょうか。

 

知らない間に銀行を取り巻く社会は劇的に変化しているんですね。